「オイディプスの刃」/赤江瀑(角川文庫)

 刀と香水、そして京都…この千年の古都を舞台にした作品が多い作者の、これはまさに独壇場とも言える作品。
 「オイディプス」とは、ギリシャ悲劇の奇才・ソポクレスが書いた戯曲「オイディプス王」の主人公の名である。精神医学の分野では「エディプス」とされ、「エディプスコンプレックス」とは、父親を憎み、母親に愛着を抱く心理をさす。
 戯曲の中で、オイディプスは実父と知らずに先王を殺し、実母と知らずに彼女を妻にする。やがて暴かれるおぞましい真実…彼は自ら両目を抉って、放浪の旅に出る。
 夏の日に起こった一家の惨劇。妖美な一振りの刀に刺し貫かれた若き研師と、その後を追った人妻、そして自ら割腹自殺をして果てたその夫。
 遺された三人の息子たちは、事件の後、それぞれ全く違う道を歩み始める。
 引き離された直後、家出したまま行方がしれない弟・剛生と、同じ修羅の道を歩もうと夜の世界に身を投じる主人公・大迫駿介。それとは正反対に、愛する母の面影を求めるように同じ「香り」の道に進む長男・明彦。
 数年後、そんな彼らの前に、弟・剛生としか思えない、しかし全く別人の顔を持つ、謎の男が現れた。
 雑誌に投稿された謎めいた詩に、駿介は剛生の匂いを嗅ぐ。そしてまた明彦は、自分が発表寸前だったものと全く同じネーミング、ノートの香水を発表した男に、剛生の匂いを嗅ぐ。
 彼は果たして剛生なのか? そしてあの夏の日の惨劇の真相は?
 血を呼ぶ白刃と、ラヴェンダーの香り。
 全編に漂う濃密な血と死の香りに、陶然と酔いしれて欲しい。
オイディプスの刃

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この記事へのコメント

みやぎぬ
2008年10月25日 22:53
 はじめまして。学研M文庫からアンソロジーが出ていたと知り、そこからこちらにお邪魔致しました。
赤江先生には、一度お目に掛かった事があります。卒論用にお話を伺わせて頂きました。中学生のとき、この作品を学校の図書館で読んで以来ですからもう29年来のファンです。幻想文学の特集号の感想を読者カードに書き、掲載していただいたのが唯一の自慢(?)です。
かずくん
2008年10月26日 23:49
 コメントありがとうございました。
 赤江先生にお会いになったことがあるとか……羨ましい限りです~。

 私は、赤江先生がデビューなさった歳に生まれまして(笑)、この作品のタイトルを知ったのは高校生の頃(映画化した頃でしたか)、でも作品を読んだのは20代半ばの頃でしたか…。
 まだファンになって十年余りの若輩者の生意気なコメントにお目を留めて下さいまして、誠にありがとうございました。

 赤江先生は多作な上、今では絶版などで入手困難な本も多く、古書店や図書館をいくつも回って、作品を読み漁りました。が、まだ何作かは取りこぼしていると思います。
 みやぎぬ様のオススメ、またはお好きな作品はどれでしょう?
 周りに赤江先生のファンが皆無なもので……是非、同好の士に、ご意見を伺いたく、存じます!

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