「還らざる夏」/加賀乙彦(講談社文芸文庫) *注意

 精神科医であり作家でもある加賀乙彦氏の自叙伝的作品。
 12歳から15歳という一番多感な年齢を「戦争」という時代と陸軍幼年学校という組織の中で過ごし、
出兵直前に今までの価値観を全て打ち崩された少年たちの、挫折と苦悩と戸惑いと、それぞれの選択を描いた話です。

 これまで私は「戦争」を扱った小説や読み物には、どこか一線を画して接してきました。
 戦争と言う悲劇を二度と繰り返さないために…と教科書で扱われる作品…それらの作品を見るにつけ読むにつけ、白々しい押し付けがましさを感じていたからです。

 一途に日本の勝利の為に戦うことを教えられ、また日本の勝利を信じてやまなかった少年たち。
彼らを「造った」大人たちは、しかしどこかで自分たちが敗北することを知っていた。
 天皇の玉音放送を聞いたとき、彼らの胸に去来したのは「戦争が終わった」という開放感と、安堵と、そして絶望…自らの信じた支えを無くした喪失感。
 安堵と開放を感じた者は、次の自分の身の処し方を考え始め、また絶望と喪失感に打ちのめされたものは、己の信念の為に最後の終着点を目指す。
 
 作者の加賀乙彦自身、あの日、昭和二十年八月十五日…彼の少年時代とそれまでの価値観は、あの玉音放送の中で死んだのでしょう。
 軍隊生活の中で、当初抱いていた反発や価値観が覆され、ただ勝つこと、ただ信じることをのみ教えられ、身も心も軍人になってゆく少年たち…敗戦で再び信ずべきものを見失い、アイデンティティまでをも打ち壊された少年たちの姿が、痛々しくてなりませんでした。





 …と、ここまでは真面目に書評を。
 「や」好きなショタコンのお姉さま方。
 ストイックで官能的で悲劇的な小説ですので、図書館で借りる、また古書店を探す…などして、是非ともお読みになることをお薦めいたします。 
 ちなみに図書館であれば…「大活字本」のコーナーにある確率が高いです。

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