「異人論」/小松和彦(青土社)

 民俗学に興味がある方…といっても、ごく少数だろうと思うが、京極夏彦作品の読者の方は、多かれ少なかれこの分野に興味を持たれているか、小説を読んだ後に興味を持たれた方が多いと思う。
 そういう方に、今回は資料として、また初心者の方には入門編として、この本をお薦めしたい。
 小松和彦氏は現在の日本において一番「元気」な民俗学者の一人だと思われる。
 「姑獲鳥の夏」の巻末参考文献にもあった「憑霊信仰論」の作者でもあり、高知県物部村に伝わる陰陽道「いざなぎ流」をフィールドワークしていらっしゃる学者さんである。
 この「異人論」では、「ムラ」の外から来る人間=異人に関しての説話・伝説を扱っている。
 誰しも一度は聞いたことがあるであろう「異人殺し」の伝説…ある家で一夜の宿を借りた旅の者がいた。その旅人が相当な蓄えを持っていると知った家の者が、密かに旅人を殺し金品を奪ってしまう。その金のお陰で、その家は裕福になるが、やがて、その家に不幸が続くようになる。家人が病に倒れたり、生まれた子供に障害が出たりする…そうした伝説・説話の中に隠されている「ムラ」社会の中での貧富の格差、また、裕福な家に対する村人たちの妬みの感情が「異人殺し」伝説の真の姿である…と解いてゆく。
 他にも、「化物退治譚の深層」「妖怪と異人」など、興味深い論文がまとめられている。

 こういう専門書には、よほどその分野に興味がなければ、「高いし、堅そうだし」となかなか手が伸びにくいものでしょうが、小松先生の御本は、比較的手に取りやすいのではないか…と思います。
なによりも文章が平易…わかりやすい。だから一般の方にも、高い評価を得ているのだと思います。 そう、難しいことを難しい言葉で説明するのは簡単なことなんです。
 難しいことを易しい言葉で説明することの方がよっぽど難しい。例えば…小学生にもわかるようにニーチェの「神は死んだ」って言葉を説明することの方が、難しいんです。
 だから難しい言葉で書かれた「哲学書」なんてものは、読んでも無駄です。難しいことを簡単に説明できない頭の悪い人が書いた本なんか、読むだけ時間の無駄です。
 人は本を読むときに、その文字を、言葉を、自分の中にある「言葉」や「イメージ」に重ね合わせたり、自分なりに「翻訳」して、自分のものにしながら読んでゆくものです。それができないような本や論文は、すっぱり諦めましょう。そして、もっと自分にあった本を一冊でも多く見つけたほうがよいです。
 そう、難しい本は難しいことがわかる人に任せておけばいいんです。色んなものを読んでゆくうちに下地ができて、そのうちその本にも手が届くようになっている…ものです。…あらら、なんだか途中から「読書論」になってしまっていますが。

 まあ、そういうわけで、小松先生の御本は比較的ハードルが低い本でもあり、手に入りやすい本でもあるので、民俗学の入門編にはうってつけです。最初から柳田先生や折口先生のものに手を出すと…挫折しかねないので。
 
 
 
異人論―民俗社会の心性

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この記事へのコメント

るえご
2005年07月15日 01:00
最近はちょっと民俗から離れていましたが、小松和彦には興味あります。
たしか人身御供の話を読んだことありますが、「異人論」面白そうですね。でも京極夏彦はまだ読んだことないです。

かずくん
2005年07月16日 09:45
コメントありがとうございます。
コメント第一号です!

京極夏彦の「妖怪シリーズ」は私の過去のブログにもありますので(「姑獲鳥の夏」)ご参照を。
小松先生の本は他にも何冊かあるので、また追って紹介させていただきたく存じます。

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