「歓喜月の孔雀舞」/夢枕獏(新潮社)

 ちょっとぞっとする…ブラックな短編集です。
 自分に対して笑わない姉に「微笑」を送る少年。
 自分の気に入らない人間に「ころぼっくり」を送る少年。
 少女と少年の秘密の遊び……。
 中でも「髑髏盃(カバーラ)」は、実際に夢枕氏がヒマラヤで体験した出来事をドキュメント小説に仕立ててあるものらしい。昭和60年頃の話だそうですが。

 この話…私は直接夢枕氏の口から聞いたことがある。というのも…夢枕氏が私の母校の大学に講演にこられた時のメインの話がこれだったのだ。
 あれは…平成二年か三年のことだったか。我が母校の大学には「宗教局」なるサークルの一群があり、その局が毎年秋の「報恩講(親鸞聖人のご命日法要)」前後に「宗教文化講演会」なるものを催すのである。そのゲストとして、その年、夢枕獏氏にお越し願ったのだ。
 その年の春頃だったか…サークルの同回生で、「宗教文化講演会」の実行委員に当たっていた奴が、雑談の時に「講演会…誰に来てもらおうか~」とため息混じりに漏らしたとき、私は「夢枕獏先生に来てもらおうで!」と何の気なしに言ったのだった。高校時代から氏の「キマイラ吼」シリーズを読んでいた私は、作品に仏教的匂いを感じていて…あとはミーハー気分も多少あり、即座に氏の名前を出したのだった。
 それから何週間かして…「一応交渉はしてみたんやけどな…『僕のは仏教といっても密教系だから、そちらの大学の趣旨に合う話ができるかどうか…』って渋られてる」と交渉に当たった彼は言う。  そこで初めて、彼が私の話を真面目に取り上げて、直接交渉にまで臨んでいると言うことを知ったのだった。
 そうして、その年の秋、夢枕氏は龍谷大学を訪れ…そこで、明治時代西本願寺が派遣した「大谷探検隊」と彼らの持ち帰った文物のことを知り、興味を持ち…その後「キマイラ」シリーズに引用することとなったようである。
 ちょっと思い出話が長くなったが、夢枕氏はその後も大学との交流を続け、小説や講演にその経験を生かしていらっしゃるようである。

 また、表題作「歓喜月の孔雀舞」は、「月に呼ばれて海より如来(きた)る」「上弦の月を喰べる獅子」と同時期に書かれた一連の「月と螺旋の物語」だそうである。
 あわせてお読みになることをお薦めする。


 歓喜月の孔雀舞(パヴアーヌ)

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