「陰陽師」/夢枕獏(文芸春秋)

 映画にもなりましたし、ドラマにもなったしで知らない人はいないでしょう。
 「陰陽師」=安倍晴明。今では常識ですよね。
 しかしこの本の初版が発行された頃には、まだまだ「陰陽師」も知名度は低かったように思います。
 今でこそ、様々な作家の方が、安倍晴明を主人公にした小説や漫画を描いておられますが…この本はそんな「陰陽師ブーム」のさきがけとも言うべき本。

 『今昔物語』『古事談』『宇治拾遺物語』などに描かれている安倍晴明のエピソードに、当時の風俗なども絡めてあって、実に面白い。例えば第一作目の『玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること』は『古今著聞集 五九五』に取材したものですし、そこに出てくる源博雅と蝉丸法師とのエピソードは『古本説話集 蝉丸の事、 第二十四』に取材したものです。
 人物描写も、故意に夢枕氏独特とも云うべき「歪み」を入れてあって、それが登場人物に厚みと凄みを増している。
 もともと夢枕氏の文章は簡潔で、さっぱりしていて、読みやすいのですが、夢枕氏の造形した辛口の「安倍晴明」像と文章がぴったりと合う。
 岡野玲子先生が漫画化していらっしゃいますが…夢枕氏自身が「両思い」と語るくらい、こちらも質の高い漫画に仕上がっています。

 映画やドラマのせいで最近では名前や、安倍晴明=野村萬斎というイメージばかりが先行してしまっているような気がします。
 いや、萬斎さんが悪いというわけではないのですよ? 夢枕氏の「安倍晴明」のイメージに合う役者さんは、彼しかいないと私も思いますから。
 でもね、原作には原作の…また違った「味」があるのです。
 短編形式の話も多いので…「有名になりすぎちゃったから、今更読むのもなあ…」とか思ってらっしゃる未読の方!! 是非ご一読を。

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