「羊たちの沈黙」/トマス・ハリス(新潮文庫)

 ジョディ・フォスター主演で映画にもなりました。知らない人はいないでしょう。

 シリアルキラー、FBI心理分析官…この映画以来ことに注目され、日本でも「プロファイリング」という言葉がたびたびテレビをにぎわすようになりましたよね。…というか、こんな言葉が度々出てくるような怪異な事件、世相になってきたということ自体が嘆かわしいことなのですが。
 
 FBIアカデミーの訓練生、クラリス・スターリング。彼女は上司からの命令で、ある一人の囚人の面会に行くことになる。囚人の名はハンニバル・レクター。”ハンニバル・カンニバル”と呼ばれた精神科医にして食人鬼である。高名な精神科医であった彼に、連続殺人事件「バッファロウ・ビル事件」に関するアドバイスを受ける為に。
 バッファロウ・ビルと呼ばれる殺人鬼は、これまでに五人もの若い女性を殺し、その皮膚の一部を剥ぎ取っていた。
 「今度は頭皮を剥ぐだろう」…レクター博士の不気味な予言が、監獄に響く…。

 原作にも原作の味があって良いのですが、映画にも映画の味があって捨てがたいんですよね。日本の映画じゃこうはいかない。何でなんでしょうね? どうしても端々はしょった「ダイジェスト」みたいになってしまうものなのに。
 何がいいって…ハンニバル・レクター博士! 原作よりも映画の方がかっこいいんですよ! ほとんどまばたきせずにスターリングを見つめる青い瞳。淡々と繰り広げてゆく問答の合間に見せる仕草。そして何より、初登場のシーンが! 
 監獄に歩み寄ってくるスターリングを、椅子から立ち上がり部屋の中央で直立不動で迎えるあの場面! 原作ではたしか寝台の上で雑誌を読んでいたんですよね。あのシーン…クラリスを待ち構えていたぞ!っていう異様な威圧感と緊迫感が漂っていて、見ているこっちもドキッとさせられてしまう。話してみると、普通、いやそれ以上の優秀な頭脳の持ち主と知れるだけに、一つ、二つと見え隠れする異常な行動との違和感が大きくて。
 あとどなたかも言ってらっしゃいましたが、「これはクラリスとレクターの恋愛映画とも見ることが出来る」。
 この二人、直接には(とはいえ、いずれも牢越しに)3回しか会ってはいないのですが…そうだねえ、そう見えなくも無い。少なくともレクターの方は、スターリングに好意を持っていますよね。(その好意が高じて「食べたい」になちゃうんでしょうが)
 三回目に会ったとき、レクター博士がスターリングに絵を渡すシーンで…ほんの少し指先が触れて、その感触を楽しむようにゆっくりとレクターの指がスターリングの指をなでるシーンがあるのですよ。二人の体が触れたのはたったのあれだけ。
 でもね、あの指の仕草だけで、レクターのクラリスに対する思いが…読み取れる。ああああああ…すごいよ、すごい! アンソニー・ホプキンズ! あんた、すごい!! 
 その後、「ゴールドベルク変奏曲」(しかもあれ、グレン・グールドが最晩年の頃に録音した、一番ゆったりした演奏のやつでしたよね?)の調べの中、淡々と「食事」をこなしてゆくあの演技……。あああああ…私の「レクター」は彼以外にはありえませんて!!(この作品の前作「レッド・ドラゴン」が同じく映像化されていますが、そちらではレクター博士がアンソニー・ホプキンズじゃなかったんですよ~。最初のやつは!)。
 映画ともども、ご賞味下さいね!

羊たちの沈黙

映画はこちら↓


続編はこちら↓
「ハンニバル」



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