「百億の昼と千億の夜」全一巻/光瀬龍:原作 萩尾望都:漫画(秋田文庫)

 これは「日本SF界の金字塔」と称される光瀬龍氏の原作を、「トーマの心臓」「ポーの一族」の作者萩尾が漫画化した作品です。有名なので、読んだことはなくとも、タイトルくらいは聞いたことはあるでしょう。


 今回なぜこの本か…というと、エヴァンゲリオン関係で『ディラックの海』を検索したらこの作品が引っかかってですね…本屋に注文して、購入したんです。
 読んでみて…端々読んだことあるな~という台詞とかコマとかあったんで、多分前回の文庫化当時(1980年前後)本屋で立ち読みしたことはあったのでしょうが…いかんせん、当時小学生の私には難解な話だったもので、殆ど覚えていなかったんですね。
 20年以上経った今読み返してみても…やっぱり難しい。


 主たる登場人物は3人。アトランティスの元住人・オリオナエ、シッダールタ、そして阿修羅王。
 この三人が時を超え、空間を超え旅をし、この宇宙の仕組みに挑んでゆく物語です。
 膨張し続けるこの宇宙…しかしその宇宙の果てのその向こうに、何があるのか? 
 誕生、進化、発展…そして滅びてゆく私たちは、一体誰によって造られたものなのか?
 有史以後人類に広まった様々な宗教。それらの宗教の中に含まれる「終末神話」の意味とは?
 壮大(過ぎる)スケールのSFです。
 
 そう、私ら1970年代生まれで、1980年代に小中学生期を過ごした人間にとって、「終末」という言葉は身近なものでした。56億年も待つ必要はない…あと20年ほどで「ノストラダムスの大予言」の年なのですから。
 この時期に流布した「ノストラダムスの大予言」による「1999年終末説」、米ソ冷戦、核による牽制と抑止、そして第三次世界対戦=最終戦争の脅威、核の冬の恐怖……。
 幸いにも、米ソ冷戦はソ連の民主化運動、民族国家独立の気運の高まりによるソ連崩壊というオチで決着がつき、ノストラダムスの大予言の年は事も無く過ぎ行き、人類は21世紀を迎えることが出来たのですが。
 残ったのは民族間の対立、宗教間の対立。こうした争いはなくならないものですね。
 しかし考えてみれば現在の地球上のあらゆる生物は、進化という試行錯誤の末、より早く、よりよく環境に適合し、「強者」として生き残ってきたものたちばかりなんですよね……とすれば、この地球上の生物全てのDNAに、「他者(もしくは異物)と戦う」、「勝った者こそが生き残ることが出来る」という遺伝子が最初から内包されているのかもしれない。
 そういうことならば…この地球上から人間同士の争いは消えることは無いのでしょうね…。白血球と病原体がヒトの体内で争うように。


 どなたかも書いてらっしゃいましたが、この話、クリスチャンの方はお読みにならないほうがいいです。ナザレのイエスが実は…っていう設定なので。この点に関してはちょっと「エイリアン黙示録」に共通するかな? これってやっぱり日本人ならではの発想なのかも(笑)。クリスチャンならこんなことは書かないでしょうし、思いつきもしないでしょう。……イスラム教の創始者・ムハンマドの風刺画は描いてもね。


 百億の昼と千億の夜

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この記事へのコメント

goldius
2006年08月27日 15:56
TBありがとうございました。悪役としてのナザレのイエスは新鮮でしたが、クリスチャンが読んだら確かに怒り狂うでしょうな。

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  • 「百億の昼と千億の夜」 光瀬龍作 萩尾望都画

    Excerpt: 少女漫画界の女王モーさまが漫画化したが、 少年チャンピオンに連載されたので、少年漫画扱いとする。 原作は日本SFベスト1の座を小松左京の「果しなき流れの果に」と永遠に争っている.. Weblog: 目次が日本一のブログ(自称w挑戦者求む) racked: 2006-08-27 15:52
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