「砦なきもの」/野沢尚(講談社)

 以前紹介した「破線のマリス」の作者による「四年後の『破線のマリス』」とも言うべき作品。
 主人公は「破線のマリス」にも登場した赤松君。女性編集者・遠藤瑤子の元で働いていた彼です。
 遠藤瑤子の事件(1997年)以後も首都テレビの夜のニュース番組「ナイン・トゥ・テン」は続いていた。そこへかかってくる一本の電話…「私は今夜殺されます」。名も明かさぬ女性との20分ほどのやりとりからただならぬものを感じながら、何も出来ないまま刻々と過ぎてゆく時間。
 やがて彼女の予告どおり、彼女の住所が記されたファックスがテレビ局に送られてくる…それは彼女が殺されてしまったという重い事実だった。

 1997年、1998年、1999年…そして2001年と別々の事件が語られているのですが、メインは最後の年の事件。
 夜の繁華街を我が物顔で闊歩していた一人の女子高生。彼女が女子高生売春グループの元締めであるとの情報を得た取材班は、彼女の指示に従い愛人契約を結んだという男性にインタビューをする。
 その直後首吊り自殺をした女子高校生…彼女の恋人であったと名乗り出たその男は、首都テレビのライバル局に出演し、首都テレビと「ナイン・トゥ・テン」を激しく糾弾し、たちまち若者たちのカリスマになってゆく。
 「ナイン・トゥ・テン」メインキャスター長坂文雄は、赤松とともに八尋樹一郎の過去や生い立ちを洗い出し、八尋の素顔に迫ってゆくのだが…。

 テレビドラマの脚本なども多く手がけただけあって、テレビ局の内情などが実に緻密。野沢氏ならでは作品です。
 これ、たしか役所浩司と妻夫木聡出演でテレビ朝日のドラマになっていましたよね? 私見ていないので確実なことはいえないのですが…キャスト見たら、赤松がいないんですよね(泣)。

 野沢氏は2004年6月28日自殺なされましたが…もっともっと多くの作品を残していただきたい作家さんでありました。





砦なき者

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