「悪魔の飽食」/森村誠一(角川文庫)

 しばらく「ミステリ」が続いたので、今日はまた…違う切り口から。
 この本はドキュメンタリーです。
 のちにこの本の内容をそのままに、中国映画「黒い太陽七三一」が作られました。
 かつて日本軍の軍医、そして軍属の医者たちが集められ作られた特殊部隊「七三一部隊」。
 正式名称「関東軍防疫給水部」…通称「石井部隊」。戦前から戦中にかけて満州国にあった特殊部隊です。

 「防疫」の名があるように、「疫病を防ぐ」ための研究をしていた組織ですが…それは表の顔の話。
その裏の顔は…スパイや政治犯として捕らえたロシア人や中国人を使っての人体実験。コレラ、赤痢菌、チフス…などを人工的に感染させ、その症状の経過を記録。解剖し細胞の変化も細かく記録。
 また-40度になる満州の極寒の寒さの中に手枷をはめて放り出し、手に水をかけて凍らせ、凍傷の症状による段階分け、細胞の壊死の段階分け、また何度の凍傷で治癒するか…といったことを「人体」を使って実験していたのです。
 そう、この部隊では「細菌兵器」「生物兵器」の有用さと開発が「人体」を使って行われていたのです。
 これは今日の教科書には書かれていない話です。しかし現実にあった話です。
 なのにこの部隊にかかわった多くの軍医・軍属は戦後罪を問われもせず、それどころか医学界では高い地位にのぼりつめているのです。
 それはなぜなのか…それは戦後日本を統治した進駐軍と彼らとの裏取引があったからだと云われています。多くの人命を犠牲に得たそのデータは、どの国でも喉から手が出るほど欲しかったデータだったから。水面下ではソ連とアメリカがそのデータや関係者を血眼になり探していたといいます。
 またそうした悪魔の実験・解剖で腕を磨いた彼らは、当時最高水準の技術を持つ医者となっていたから。
 実際、それらのデータはアメリカの手に渡り、戦後アメリカの細菌・伝染病研究施設設立の元になったといいます。映画「アウトブレイク」の冒頭に出てくる研究所がそうです。

 これを読むと、人間の残忍さ、冷酷さに…本当に反吐がでそうになります。
 が、こうしたことを歴史の授業で教えないという日本の体質、また歴史教育の姿勢というものが、最近の中国・韓国との歴史問題摩擦の根底にあると私は思います。
 「ヒロシマ」「ナガサキ」の悲劇も一つの戦争の悲劇でしょう。
 しかし、その被爆の事実だけで、被害者面をするわけにはいかない歴史的事実が、日本側にもあるのです。
 こうした戦争の裏側で起こったもう一つの悲劇と事実に、日本人はもっと目を向けて、見つめなおすべきだと思います。
悪魔の飽食 新版

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