「水中童子」/碧也ぴんく(新書館ウイングスコミックス)*注意

 「南総里見八犬伝」を漫画化した碧也ぴんくの「鬼外カルテ」という漫画シリーズの第一作。
 河童や天狗といった妖怪などが主人公の話です。


 この「水中童子」の主人公は河童。江戸時代に水死した陰間(当時の男娼)が、転生の場所を与えられるたびに転生の直前に水死し、今回は河童のまま陸へと上がり、人間の尻子玉をとり、人間になろうとする…その相手とは、彼を身篭っていた女のかつての恋人。身も心も自分のものになったときそれは取れると言う。そして彼は一人の少年に近づくが…。


 読後、涙が止まらなかった覚えがあります。
 河童ちゃんの想いが一途で…三上章吾が今後どう生きたのかと思うと。
 尻子玉を取る為に三上に近づいたはずなのに、本当に好きになってしまい、残された時間も殆どない……それでも三上に会わずにはいられない。切なくて、もどかしくて、哀しい。
 今はやりの「ボーイズ・ラブ」ものとはちょっと違うスタンスの話です。
 碧也先生ご本人も本に書いてらっしゃいましたが…本当、明治以前の日本文化って、男性同士の同性愛ってものに、驚くほど寛容だったんですよね。戦国武将や僧侶が稚児を抱えているのは当然だったし…キリスト教の宣教師が日本について書き送った書簡の中に「日本はソドムとゴモラ(旧約聖書の中の町の名。あらゆる悪徳や同性愛がはびこっていた為に神に滅ぼされた)のごとき国である」という言葉もあるくらい。歴史の中でみれば、同性愛というものが別段奇異なものには見えない…っていうのは、本当です。明治に入って、日本文化の中にキリスト教的風俗や習慣が定着してき始めてから…同性愛=罪という図式が常識になってきたようです。
 
 余談ですが副題の「鬼外カルテ」というのは、作中に出てくる「福内鬼外」という人物の名から取られています。「鬼は外、福は内」をもじった筆名でしょうねえ。そうそう、彼の本名はこのシリーズ中、いつかは出てくるはずです。彼もまた輪廻転生の輪から外れた存在…虚空族になってしまっているのだそうです。江戸時代の本草学者で、沢山の筆名使って歌舞伎の台本まで書いていて、しかも男色家(爆笑)。さーて、誰でしょう???

水中童子

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