「龍は眠る」/宮部みゆき(新潮社文庫)

 文庫にしては分厚い一冊。つまり! それだけ登場人物のディティールや心情描写が詳しいということなんですよ。やっぱり…みゆき姫の作品はこうでなくっちゃあ!!


 「超能力もの」というと…眉に唾して…とかまえちゃう方がいらっしゃるかもしれませんが、読んでいるうちに不思議なことに、ズルズルと引き込まれ、慎司の気持ちに同調してしまって、いつのまにか「信じてよ!」と一緒に叫んでしまっている、という現象が起こります。
 ある台風の夜、東京へ帰ろうと車を運転していた高坂昭吾の前に、自転車をパンクさせた少年が助けを求めてくる。やがて彼を乗せて走らせていた車のタイヤに、開けっ放しのマンホールの蓋が当たった。
 道路上をゴウゴウと流れる雨水。その時彼らが見つけたものは、幼い子供用の黄色い傘だった。
 瞬間掠める戦慄! 「傘の持ち主はどこだ?」
 高坂が拾った少年・稲村慎司は自ら超能力者(サイキック)だと自称し、マンホールの蓋を開けた人物と、猫を探し嵐の中彷徨う少年を幻視したと香坂に告げる。
 彼は果たして本当の超能力者なのか? そして高坂の周りで起こる事件の結末はいかに?


 これを読んでいただければ解りますが、本当にみゆき姫は想像力豊かで、優しい人なんだなということを改めて感じると思います。
 普通ここまで想像しませんよ。超能力があったなら、普通は自慢したり、優越感感じて傲慢に振舞ったりってことになるでしょう? でも、それらの果てに、ある他の人間より優れた能力を持つ人間の「苦しみ」なんて…私は今まで想像することはありませんでした。感応力があるが故の疎外感や苦しみ、悩み、そしてもどかしさ…。
 まるで、みゆき姫自身にその能力があるかのように語られる、内心の葛藤や矛盾。さすがです、ホント。「人間」を描かせたら、みゆき姫の右に出るものはいないのではないでしょうか。
 みゆき姫のミステリが、ただの「推理小説」ではなく、泣ける、そして感動を与えてくれる作品である理由は、こういう人間の血肉が通った描写ゆえであると断言します。

 本当にオススメの一冊ですので、未読の方は是非とも今夜から枕の友に!!



龍は眠る

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