「花曝れ首(はなされこうべ)」/赤江瀑(立風書房『風幻』収録)

 化野念仏寺を訪れたことはあるだろうか? そこは嵯峨野の最奥、小倉山の北山麓…かつては風葬の地として知られたその付近に建つ寺である。訪れる多くの観光客は、しかし一旦境内に入れば一種異様な光景に目を見張るであろう。大小様々な無縁仏の集められた、その異様な光景に。
 婚約者との恋に破れた篠子。雨宿りにと軒を借りたその家で、彼女は二人の美麗な幽霊に出会う。
 秋童と春之助と名乗る二人は、かつてこの地に住み、刃傷沙汰を起こして死んだ色子だという。
 二人の口から語られる、当時の闇の世界。自分を抱こうとしない男の気を惹くためだけに、秋童は己の顔をノミで裂き続ける……。
 
 幽霊との交信、というありえない設定は、しかし赤江氏の玄妙の筆にかかると、それすらも妖しい
夢幻世界の『現実』となり得てしまう。
 「地獄が恐うおすのんか? 修羅がそんなに恐ろしおすか? 好いた男と見る修羅や。おちる地獄や。おちとみやす…」
 作中の秋童の言葉である。これはまた、氏の作品を次々と貪り読む私達読者に対して氏が発した、夢幻世界への誘いの言葉……とも、取れはしまいか?

"「花曝れ首(はなされこうべ)」/赤江瀑(立風書房『風幻』収録)" へのコメントを書く

お名前
メールアドレス
ホームページアドレス
コメント